ここで、少し「きまり/ルール」について考えてみたい。先述したように、「学校」にはさまざまな「きまり/ルール」があり、それらはいってみれば子どもに不自由を強いるものである。正当に思える「きまり/ルール」もあるが、近年でいう「ブラック校則」のように、理不尽なものもある。
私は、「きまり/ルール」にもメリットとデメリットが存在すると考える。例えば、「廊下は走らない」という「きまり/ルール」のメリットは、安全に落ち着いて過ごすことができるようになることが考えられる。しかしデメリットもある。それは、歩いていると時間に間に合わなくなる可能性があるということが挙げられる。特に小学校では、「業間休み」が5分しかないところが多い。その5分に水飲みやお手洗い、次の学習の準備に加えて、音楽室や図工室などに移動しなければいけない場合もある。教員によっては遅刻に対して厳しく叱責されることもある。そうなると、廊下を走っても、走らなくても叱責される可能性があるという、何とも理不尽なダブルバインド状態に陥る。また、走って遊べないと楽しくないといったことも挙げられるだろう。多くの学校関係者からすると、廊下で走って遊ぶことは言語道断である。しかし、長野県にある私立軽井沢風越学園を見学した際、驚いたことがあった。朝、何人もの子どもたちが校舎を走り回っていた。風越学園が自由な学校だという認識があったし、私は教員の中では廊下で走ることに対して抵抗は少ないため、最初は微笑ましく見ていた。しかし、階段で鬼ごっこをしている子どもたちを見かけた時に、心配になって思わず「ここで走っていて怒られないの?」と聞いてしまった。子どもたちは平然とした顔で、「走っていて怒られたことはないです。」と答えてくれた。それに対して、「じゃあ、逆にどんなことをしたら怒られる?」と聞くと、「屋根に登ろうとした時には怒られた。」という。つまり、「廊下を走ってはいけない」というルールは、我々大人や教員からすると、安全に過ごすためになくてはならない「きまり/ルール」であるように思えるが、子どもたちからすると、廊下で走って遊ぶことができないという、デメリットにもなり得る。
他にも、主に中学校に多いであろう、制服を着なければいけないという「きまり/ルール」のメリットは、毎日の服装に悩まなくていいということや、経済的な格差が見えにくくなることだろうか。トラブルに巻き込まれた時に身元が分かりやすくなるというのも考えられる。デメリットとしては、手入れや洗濯が難しいことや服装の自由がないことなどが挙げられる。また、制服の材質が肌に合わないということも考えられる。このように、どんな「きまり/ルール」にもメリットとデメリットが存在する。本来は、子どもがそのメリットとデメリット知り、天秤にかけたうえで、子ども自身が判断することが望ましい。
しかし、それでは「きまり/ルール」を守らない子どもが出てしまう。ここで、いわゆる「よい/デキる/力のある先生」はどうするか。あくまで私の見た限りだが、「きまり/ルール」のメリットのみを強調して伝えている。もしくは、「きまり/ルール」を守っている人を称賛することで、自ら「きまり/ルール」を守るように仕向けている。これはこれで確かに高度なテクニックであるが、本当にそれでよいのだろうか。
前者のようにメリットばかりを強調すると、当然だがデメリットに目が向かなくなる。制服の場合、デザインが指向と一致しなかったり、衛生面や材質によりかぶれてしまったりすると、デメリットはかなり大きなものになる。また、デメリットに目が向かなくなるような「教育」や「指導」は、もはや「洗脳」である。後者は、褒められることが目的化してしまい、自ら考えることをしなくなってしまう。それに、「きまり/ルール」を守ること一択になってしまったのでは、クリティカルシンキング(批判的思考)どころか、普通の思考すら働かなくなってしまう。
繰り返しになるが、大切なのはメリット・デメリットを知ったうえで、子ども自らが選択することなのではないか。どうしても守らせたいなら、罰則を設けるしかないのかもしれない。もちろんそれは、罰を避けるための行動であり、思考は停止しているが、他の人の迷惑になる場合はやむを得ないかもしれない。
書いてみる